大会長ご挨拶
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『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』大会長
原 丈人
法務省 危機管理法制会議 議長
アライアンス・フォーラム財団 代表理事
皆さん、こんにちは。
2019年、創立5周年記念~第5回がん撲滅サミット大会長(当時)で現・永世大会長の故・北島政樹先生が惜しくも開催前の5月21日に急逝されました。北島先生のご遺志によるとのことで後任の大会長就任のご依頼をお引き受けすることにいたしました。今年は『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』大会長としてご挨拶させていただきます。
さて、少し長くなりますが自己紹介を兼ねて、これまで私が取り組んできたことをまずお話させていただきます。
アメリカのコロナ感染者の数はますます膨れ上がり、マサチューセッツ州は8月1日から米国内から州内に移動する人に対しての14日間の強制検疫自宅待機を強いる方針まで打ち出しました。サンフランシスコの私の周辺は安全ですが南部カリフォルニア州は感染者が激増しているようでロスアンゼルスなどは行けそうにもありません。
感染症が長引く中、中間層、貧困層はさらに貧しくなる一方で、金融緩和の恩恵を受けたマネーゲームに興じる富裕層はますます豊かになってきています。大多数の国民を貧しくする現象こそを経済危機と呼ぶべきでしょう。この二の舞を日本国民が踏まないためにも経済危機対応をする必要があります。
日本政府(法務省)に設置された危機管理会議で感染症危機、自然災害危機が議論されていますが、これに加え経済危機から国民生活を守るための会社法の見直しを行うことを内閣府参与の立場で行います。
本来の会社法は会社に勤める社員とその家族を守るように設計されるべきです。たとえばコロナ禍で一年位売り上げが立たなくても社員とその家族の生活は、銀行借り入れがなくても政府の補助金がなくても会社が自力で守れるようにするために会社法を改正し法定準備金にあたる資金を配当や自社株買いには使えないようにするなど、あるべき姿に戻すことなどすべきことはたくさんあります。
コロナ対策で金融緩和を行ってもその恩恵は解雇された非正規雇用者や底辺にある人々には届かず、株式市場にお金が流れ高速取引を行うファンドやアクティビストたちが潤う構造は日本でも同じです。このような状態を正そうとする動きを政府内で起こす必要があるのです。
私は20代半ばに日本を離れ現在に至るまで、ずっと海外に暮らしております。20代は中央アメリカの考古学に没頭、29歳の時にシリコンバレーで米国最初の光ファイバーディスプレーシステム開発メーカーをスタンフォード大学のキャンパスで立ち上げたのを皮切りに30代から40代にかけてソフトウエア、半導体、通信技術、バイオメディカルなど先端技術分野の事業をアメリカ、欧州、イスラエルでいくつも立ち上げ、そのうちいくつかは世界的な大企業に成長しました。
50代ではアジア、アフリカなど途上国世界で技術を応用して貧困問題を解消することに取り組んできました。国連でも政府間機関特命全権大使として飢餓、栄養不良、貧困問題などに取り組んできました。
同時に米英で経験した経済社会構造の欠陥と将来ビジョンの欠如に失望し、構造的な枠組みを改良していくことに挑戦するために日米欧のみならず国連、アフリカ、アジアなど途上国の公職を兼務するようになりました。
英米を中心に完成されてきた資本主義を推し進めると経済格差はますます広がり、中間層は世界中から減り続けます。中間層が減ると民主主義も機能しなくなります。
貧困層は長期的に物事を考えにくくなり、目先の不満に目が行くようにならざるを得ないので、この状態を悪用して地域紛争やテロリズムをお横行させやすい土壌が全世界に出来上がってしまいました。
英米主導の価値観を地球上に押し付けることは、もはや困難な世紀へと突入したのです。
なぜ、英米型資本主義が限界を迎えるかというと、彼らは”会社は株主のものだという間違った考えを理念として持っているからです。この考え方を”株主資本主義”と呼びます。
株主資本主義の考えのもとでは同じ利益を上げるのならば短ければ短いほうが良いという考えが基本にあります。例えば、ある会社の経営者が10年間かけて100億円の利益を上げても、同じ利益を5年で上げる経営者のほうが高い評価を受けるのです。しかし5年より短い期間では研究開発や製造などはできません。
1年間や1か月で100億円を稼げるような商売は投機的な金融しかないのです。しかし投機は必ずバブルをつくり、バブルは必ず崩壊します。その過程で起きるのがゼロサムゲームと呼ばれる現象で、中間層の持っていた富が富裕層に移り、ごく少数のスーパー富裕層と絶対多数の貧困層に二極分化し、中間層の没落によって世界全体の大きな経済格差が広がってきました。
民主主義が機能するための前提として英米諸国が形成してきたのが中間層でした。しかし、この中間層が没落した英米において民主主義は機能しなくなってきていることを皆さんは目の当たりになさっておられると思います。
そしてスーパー富裕層となっていったのはファンド株主と、彼らに加担した企業経営者です。サラリーマン、教師や研究者、中小企業主、農業従事者、タクシー運転手などの中間層は、相対的な労働分配率は欧米日本各国とも下がり、貧しくなってきていることがわかります。
これまでグローバルスタンダードとされてきた英米型資本主義は今、格差を拡大して行き詰まっています。
この状態を打開する手段として私は「公益資本主義」を提唱しています。
公益資本主義とは、社員、取引先、顧客、地域社会、株主など企業活動を実りあるものに導いてくれるすべての社中に、適正な分配を中長期に渡って継続して行う企業哲学を指します。
公益資本主義に基づいた適正分配は中間層の拡大を可能にします。今世紀こそ、相対的に安定した雇用と厚い中間層を維持できている日本から公益資本主義を発信し、全世界に広めていく好機であると確信しています。
公益資本主義を理解し実践していくと例えば、日本にある270万社で働く人々の平均給与を倍増させることも可能です。がん撲滅とは無関係なのでこの話はここではしませんが、いろいろな応用が利くのが公益資本主義による社会経済システムの構築です。
ここで言う公益とは「私たちや私たちの子孫の経済的及び精神的な豊かさ」のことを指します。そして会社とは社会の公器であって、事業を通じて社会に貢献すべきものです。
「社会に貢献」とは社員、顧客、仕入先、地球といったすべての「社中」に会社が生み出した付加価値を分配することです。その分配は持続的に行われなければならず、それを可能にする経営の中長期視点、新事業に挑戦する起業家精神が必要です。この積み重ねの結果、公益を増進することができます。するとかかわる人たちがすべて報われる社会が実現します。
私のこうした考え方の源流にあるのは父と祖父の、こんな教えからです。
父はコクヨの技術部門をゼロから作り上げた人物です。私は父に連れられ子どもの頃よく工場に行きました。
「お父さんの仕事は何?」と私が聞くと父は「社員に事故が起きないようにすることだよ」というのです。工場の事故防止の掲示板には「死亡ゼロ」ですが、いつも「ケガ」が1人とか2人とか書かれているのです。
ところがある日、工場に行くととても涼しく、ケガの欄が「ゼロ」になっていました。
父は空調機を会社に導入するにあたり、社長室や重役室ではなく、真っ先に工場に入れたのです。
「会社のために現場で働いてくれる人たちを優先すべき。事故が減れば社員が喜び、生産効率も上がる」と父は考えたのです。また祖父は明治末にコクヨを創業した人です。
祖父はよく口にしていたのです。
「競争相手の会社を潰すような寡占はいけない。それぞれ持ち味を生かし、共存共栄することが大切だ」
これが祖父の信念でした。
こうして私は子供のころから公益資本主義を学んだのです。
ダボス会議の議論もそうですが、これから世界は公益に向かうことでしょう。
こうしたことを俯瞰すれば、私は公益資本主義によって「人生の途中で大病や事故にあっても健康を回復し天寿を全うする直前まですべての国民が健康に暮らせる社会をつくる。」ことができると考えています。
例えば、がんになったすべての人々ががんを克服し、交通事故にあった人が一生車いすに座るのではなく再び立って歩けるようになり、失明した人も再び目が見えるようになることを実現できる社会です。実現が困難だと思う方は大勢おられると思いますが、何事もまずは大きな志を立て、戦略を練り、そのうえで緻密な実行計画を作り着実にすすめていけばできます。
私は「天寿を全うする直前まで健康でいることを実現できる世界最初の国に日本がなる。」というビジョンを2013年に掲げました。
人口減少と急速な高齢化時代に突入する我が国において国民一人一人にとっても希望を持つことができ、日本人として誇りを持てるビジョンを掲げたい。実現に向けて我が国が着実に歩む姿をみる諸外国は日本に対して憧憬の念を抱くでしょう。
これを実現するためには三つの要素が必要になります。「技術イノベーション」「制度イノベーション」そして「エコシステム」です。
技術イノベーションは、文字通り不慮の事故による障害や、がん、心疾患、感染症、難病などで健康な生活を奪われても治療し、再び健康な生活を取り戻せるための医学分野の科学技術開発のことです。
制度イノベーションは、技術イノベーション以上に大切ともいえます。
技術イノベーションの結果、健康を回復できる治療法が完成したとしても、これを速やかに必要とする人々が使えるような制度設計を行うことを制度イノベーションと言います。
現在は、世界の多くの国々が米国食品医薬局(FDA)の定める新薬許認可制度に倣っています。この制度で認可をとるには10年以上の年月がかかるので、数年の余命告知を受けた患者は薬を手にする前に最期を迎えてしまいます。
患者の立場に立ってみれば有効性が確立できていなくても可能性さえ予測できる場合には、安全性確認ができた段階で新薬を手にしたいはずです。このような制度改革のためのイノベーションが必要になってきます。
三つ目のエコシステムとは、技術イノベーションと制度イノベーションに関連を持たせ、お互いに前向きの影響を与え乍ら前進させていくための仕組みのことを指します。
さらには、2050年までには人類を苦しめている6,500種類の難病も日本でなら治療の可能性があるという世界的な評価をつくりたいと考えています。
技術イノベーションと制度イノベーションがばらばらに動いていてもなかなか機能しない。そこでビジョンを実現するため、エコシステムとして「天寿を全うする直前まですべての人々が健康で暮らせる社会の構築」を目指して、2013年にワールドアライアンスフォーラム サンフランシスコ会議を発足させました。
日本政府と国連経済社会理事会の特別協議資格を持つ米国公益法人のアライアンス・フォーラム財団が共催でこれまで毎年開催してきました。
技術イノベーションと制度イノベーションを継続して引き起こすエコシステム(原動力)を2日間で体現できるように設計されていて、毎年の人選は変わりますが、ポール・バーグ博士などノーベル賞受賞者やスタンフォードなどの研究者、PMDAの近藤達也理事長やFDAなど許認可機関の代表者、世界中から参加するベンチャー経営者、大企業、政府代表者などが集い「すべての人が健康で寿命を全うするには何をすべきか」という目的で集まり議論します。一昨年は10月29,30日にサンフランシスコで開催致しました。
ところで私はこうした活動の中で、がん撲滅サミットの存在を知りました。提唱者は作家でジャーナリストの中見利男氏です。
いつの日か、がんを撲滅したいと願い、政府と民間が一体となって取り組んでいるがん撲滅サミットは日本だけではなく、広く国際社会でも必要な活動です。
そこで私は一昨年開催されたワールド・アライアンス・フォーラム サンフランシスコ会議でがん撲滅にも取り組む決意を日本の中見利男氏にもお伝えしたところ、日米でがん撲滅をやりましょうというご提案をいただきました。
それを受けてサンフランシスコと東京で開催される両会議で『がん撲滅による日米共同宣言』を実施して、まさに日米でがん撲滅に向けて乗り出そうというアクションを起こしたことは日本や米国だけではなく世界でもエポックメーキングな出来事だったと思います。
そして今年、いよいよ我々は『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』と銘打ち世界の有志と連携しながらがん撲滅への挑戦を開始します。
会場は江戸時代、まさに先端医療の聖地となった大阪です。奇しくも2025年には医療をテーマの1つとする大阪万博が開催されますが、我々は大阪の地に医療ルネッサンス(再生、原点回帰)の風を呼び覚ますエナジーとなって見せる覚悟があります。
今、日本に必要なことはがん医療界に革新的な技術を導入し、その力によってがんを撲滅するという力強いエネルギーです。海外で標準治療になるのを待ってから我が国が追随するというのでは壁は突破できません。自らが先頭に立って壁を突破しようと工夫しなければなりません。
新しい力を生み出そう。新しい技術を結集しよう。そのためには、どんな圧力も抵抗勢力も恐れない。でなければ世界をリードできるような真のイノベーションを起こすことができません。
そこで今大会は世界のがん医療界の重鎮にご参加をいただき、『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』を12月5日(日)午後1時より大阪国際会議場にて開催させていただきます。
今大会のそもそものテーマは『大阪から世界に広がるがん撲滅への挑戦! すべてのがんにリベンジを!』です。
私は、制度イノベーションを起こすことで、すべてのがんにリベンジを果たすことができると思います。
医療技術が完成し、安全性の承認も取れているのに、法律や制度が障害となって患者が使えないような事態は絶対に無くすべきです。
この点で我が国は2014年11月14日に薬事法を改正し、再生医療においては条件付き、期限付き早期承認制度という世界初の画期的な制度を創設しました。従来、米国の制度に追随してきた日本が、世界に先駆けた制度をつくったので衝撃が走りました。
がんの分野においてもこのような革新的な制度設計を日本が先駆けて示し、世界のモデルとなる「制度イノベーション」を起こしていく国として世界的な評価を受けるようにしようではありませんか?
再生医療分野のみならず、がんの分野でも次々と制度イノベーションを起こし、諸外国で開発された様々な治療を日本ならいち早く受けられるという世界的評価を得られれば、日本人のみならず海外からもがん先進治療のために患者やその家族が何百万人という規模で渡航するでしょうし、これに伴って最先端医科学研究所や新薬を開発メーカーも日本に拠点をもうけたり、海外の大手製薬、医療機器会社も日本での事業を拡充させることでしょう。
患者を救うと同時に日本に新しい産業が生み出すうねりをつくることもできるのです。
さらに治療から得られる莫大なビッグデータの扱いに関する理想的な制度設計を規定し、これを将来の予防、診断、治療、予後管理へとまわすフィードバックループをつくるのです。
すでに免疫チェックポイント阻害剤の実用化の功績で京都大学の本庶佑先生が2018年ノーベル賞を取られましたが、近年は副作用のない免疫治療の研究開発が世界中で次々と行われています。
これらは有効性が予測された段階で安全性さえ確認できれば、条件付き期限付き早期承認制度をがん免疫療法の分野でつくっていくことを我が国でいち早く実現できるようにしたいものです。
さて、いよいよ『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』を始動します。
世界レベルで活躍されておられる皆様のお話は研究者のみならず、広く病と闘っておられる患者の皆様や企業、自治体の皆様にぜひともご清聴いただきたいと思います。
そして、がん撲滅サミットの目玉企画となった公開セカンドオピニオンを今年も引き続き開催予定です。
今年の公開セカンドオピニオンも日本が世界に誇る気鋭の先生方とご来場者の皆様による白熱したコラボレーションを期待しています。もちろん司会は昨年、病に倒れたのち奇跡の復活を遂げた中見利男氏(がん撲滅サミット代表顧問、提唱者、作家・ジャーナリスト)がリベンジ登壇されます。
同氏が繰り広げる会場の患者、ご家族の皆様とステージの医療者の皆さんの心を一つに纏められる、あの光景を再び目にすることができるのです。私も今から楽しみです。
最後にアライアンス・フォーラム財団とがん撲滅サミットで、『世界がん撲滅大阪宣言2021』を発表させていただきます。
これは民間主導によって世界の有志が共にがん撲滅の実現に向けて戦略的に動き出すことにより、欧米、アジア各国にもがん撲滅の輪をこうして拡げていこうというものです。大阪から始まったがん撲滅への挑戦が今、世界に向かって広がろうとしております。
大事なことは、がんという大いなる人類の難問に対して、政府、経済界、患者、ご家族、一般市民、そして医療者が心を一つにしてオールジャパンで向き合う環境を作り上げることです。
それが「がん撲滅サミット」を旗揚げさせていただいた最大の目的です。どうぞ私共の趣旨をご理解いただき、ご協力、ご支援のほどを宜しくお願い申し上げます。
がん患者がそこにいる以上、我々は現状に満足して立ち止まることは許されません。「がん撲滅」という人類のニューフロンティアに対し、共に前進しようではありませんか!
もう、がん撲滅は日本人だけの戦いではありません。人類全体の戦いにしなければなりません。私共はそれを実感していただける大会にして参ります。
皆さん、当日、ぜひ大阪国際会議場でお会いしましょう!