『世界がん撲滅サミット2022 in OSAKA』メッセージ

世界がん撲滅サミット2022 in OSAKA 大会長
原 丈人
アライアンス・フォーラム財団 代表理事
(国連経済社会理事会の特別協議資格を有する合衆国非政府機関)

 冒頭、7月8日に凶弾に斃れた安倍晋三元内閣総理大臣に心より哀悼の意を表します。
 安倍元総理は公益資本主義の良き理解者であり、常に海外における日本の地位、役割、そして古来からの精神文化を、いかにして伝え、残し、引き上げていくかという大きな視点から物事を見ておられました。
 私も帰国した際は安倍元総理と会談し、今後の日本のあり方や国際社会の様々な問題について時間を忘れるほど議論を交わしました。本当に支えがいのある大政治家であったと思います。
 こうした中で、巨星が堕ちた日本の将来は益々危ぶまれて参ります。
 日本を取り戻そうと仰った安倍元総理のメッセージは我々一人ひとりの日本人が今一度、良く嚙み締めなければならない言霊の1つです。
 
 大病を得ては復活してゆく安倍元総理のお姿を思い浮かべつつ、われわれは国民病となったがん撲滅に今一度、大きな覚悟とエネルギーを燃やしながら立ち向かうべき時ではないかと思います。
 
 皆さん、がん撲滅に向けて立ち上がりましょう。健康長寿で暮らせる日本を作り上げ、困った人がいれば助け合う、あの日本を取り戻しましょう。
 
 さて、『世界がん撲滅サミット2022 in OSAKA』大会長として一言ご挨拶申し上げます。
 おかげ様で新型コロナウイルス禍の中で本年も本大会を開催致します。
 政府、経済界、医療界、そして各界の皆様、ご協賛いただいた皆様、関係者、患者の皆様に心より御礼申し上げます。
 
 今年は米国より世界的ながん医療の権威マーク・J・ラテイン教授、アジア代表としてマイクロバイオーマの世界的権威・香港中文大学フランシス・チャン医学部長、EUより2019欧州臨床腫瘍学会会長のジャン=イヴ・ブレイ教授という世界のリーダーにもご参加をいただき、地球上の国々ががん撲滅に向けて連携することになった歴史的かつ画期的な大会となります。
 
 振り返れば2013年、私は「天寿を全うする直前まで健康でいることを実現できる世界最初の国に日本がなる」というビジョンを掲げました。さらには、2050年までには人類を苦しめている6,500種類の難病も日本でなら治療の可能性があるという世界的な評価をつくりたいと考えています。
 
 これを実現するためには三つの要素が必要になります。「技術イノベーション」「制度イノベーション」そして「エコシステム」です。
 
 技術イノベーションは、文字通り不慮の事故による障害や、がん、心疾患、感染症、難病などで健康な生活を奪われても治療し、再び健康な生活を取り戻せるための医学分野の科学技術開発のことです。
 
 制度イノベーションは、技術イノベーション以上に大切ともいえます。
 技術イノベーションの結果、健康を回復できる治療法が完成したとしても、これを速やかに必要とする人々が使えるような制度設計を行うことを制度イノベーションと言います。
 
 現在は、世界の多くの国々が米国食品医薬局(FDA)の定める新薬許認可制度に倣っています。この制度で認可をとるには10年以上の年月がかかるので、数年の余命告知を受けた患者は薬を手にする前に最期を迎えてしまいます。
 
 患者の立場に立ってみれば有効性が確立できていなくても、可能性さえ予測できる場合には、安全性確認ができた段階で新薬を手にしたいはずです。このような制度改革のためのイノベーションが必要になってきます。
 
 三つ目のエコシステムとは、技術イノベーションと制度イノベーションに関連を持たせ、お互いに前向きの影響を与えながら前進させていくための仕組みのことを指します。
 
 技術イノベーションと制度イノベーションがばらばらに動いていてもなかなか機能しない。そこでビジョンを実現するため、エコシステムとして「天寿を全うする直前まですべての人々が健康で暮らせる社会の構築」を目指して、2012年にワールド・アライアンス・フォーラム・サンフランシスコ会議を発足させました。
 
 さらに私は2019年に開催したワールド・アライアンス・フォーラム・サンフランシスコ会議で、がん撲滅にも取り組む決意を日本の中見利男氏にもお伝えしたところ、日米でがん撲滅をやりましょうというご提案をいただきました。そこから我々はがん撲滅に向けて本格的スタートを切らせていただいたのです。
 
 今、日本に必要なことはがん医療界に革新的な技術を導入し、その力によってがんを撲滅するという力強いエネルギーです。海外で標準治療になるのを待ってから我が国が追随するというのでは、壁は突破できません。自らが先頭に立って壁を突破しようと工夫しなければなりません。
 
 主だったがんの撲滅を2030年までに実現し、世界で最初の「がん撲滅国家」となることを目指そうではありませんか。私はがん撲滅と並行して心臓病、脳、肝臓、肺などの病気治療技術や環境の向上、車椅子や失明からの解放など「大病をしても回復し寿命を全うする直前まですべての国民が健康に暮らせる世界最初の国をつくる」ことに向けて、これからも尽力していきたいと思います。
 
 日本のみならず世界の力を合わせて新しい力を生み出しましょう。免疫療法、ウイルス療法、より安全で効果的な放射線療法など次々と新しい技術を取り入れて技術イノベーションを我が国がリードしていきましょう。そのためには、断固として制度イノベーションを押し進め、どんな圧力も抵抗勢力も恐れない。それこそが中見利男が提唱する医療民主主義の確立です。でなければ世界をリードできるようながん撲滅を実現できる国にはなれません。真のイノベーションを起こすことができません。
 
 新型コロナウイルス禍の中で苦しんだこの数年間、我々は失ったことも教訓として得られたことがあります。
 
 そこで今大会のテーマは『今、大阪から世界に広がるがん未来医療への挑戦! 不可能の壁に風穴を開けろ!』と致しました。
 
 がん患者がそこにいる以上、我々は現状に満足して立ち止まることは許されません。「がん撲滅」という人類のニューフロンティアに対し、不可能を可能に変えるため共に前進しようではありませんか!
 岸田文雄内閣総理大臣が新しい資本主義として公益資本主義による改革を進める中でがん医療の世界にも公益資本主義の発想は必要です。
 公益資本主義の理念で制度改革を行い、日本を、寿命を全うする直前まですべての国民が健康で生きることができる世界最初の独立国家にするには、まず第一に、がん撲滅をやり遂げねばなりません。
 もう、がん撲滅は日本人だけの戦いではありません。人類全体の戦いにしなければなりません。「いのち輝く未来社会に向けて」という理念を掲げる2025年の大阪・関西万博の会場となる、ここ大阪の地で本日、私共はそれを実感していただける大会にして参ります。

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