小泉雅彦先生よりご来場の皆様へのメッセージ

小泉雅彦先生
大阪大学大学院 医学系研究科
保健学専攻 生体物理工学講座 
放射線腫瘍学研究室
(兼)大阪大学医学部附属病院 
放射線治療科 教授

 

 放射線治療とはX線や粒子線などの放射線を使って、がんを切らずに治します。放射線の電離作用で化学結合を切断し、がんの遺伝子=DNAを障害することでがん細胞を殺し、がんを撲滅します。全身的に照射することもありますが、通常、がんの局所だけへの照射を行います。
 皆様がご心配される放射線による被ばくとしては、非常に高い線量を照射しますが、がん病巣への治療の位置付けという医療的利益がありますので、許されている治療となります。
 一般に全身療法である抗がん剤と違い、外科手術と同様な「局所」の治療です。外科手術より広い治療が可能です。治療範囲は局所の腫瘍だけでなく、リンパ節、遠隔転移といったがんの拡がり全てに及びます。
 放射線治療は、外科手術、抗がん剤、(最近では免疫療法)を含めた3(4)本柱の集学的がん治療の一角を担います。単独で放射線治療も行いますが、多くはこれらの治療のそれぞれの前後や同時など「併用」して治療を行っています。
 放射線治療の一般的な特徴として、以下のことなどが挙げられます。
1.局所治療
2.手術よりは局所制御率が低い
3.治療期間が長い(1日~数週間)
4.手術より侵襲が少ない
5.抗がん剤より全身への影響が少ない
6.機能・形態が温存される
 このような特徴から、根治的=がんを根絶するだけでなく、対症的に例えば出血・痛みなどの症状を緩和することで、より良い生活(ADL)を確保するのにも役に立っています。
 放射線治療の方法としては、外部から放射線を当てる外部照射、小線源を体の腔内に挿入する腔内照射、組織内へ直接刺入する組織内照射があります。
 最近は、位置を正確に保って、呼吸などの体の動きにも同期し、精密な照射の範囲で行う高精度な治療になってきました。一部のがんでは手術成績とほぼ匹敵する様な、根治的な治療も可能になってきました。
 また、標準治療の手術や化学療法に代って放射線治療を使う場合もございます。例えば、患者様が高齢や、全身状態不良など何等かの理由で手術不能な場合、同様な病巣であってもそれが再発や転移の場合、また抗がん剤が効かなくなった場合などの医学的理由があります。あるいは、患者様ご自身の希望で、病巣部位の機能・形態「温存」を望まれる場合や、何らかのご理由で外科手術・抗がん剤を「拒否」される場合などです。
 患者様におかれましては、是非、このような身体に優しい放射線治療をご活用頂ければと思います。
がんの部位、病理組織、患者様の状態によっては、お役に立てる場合があろうかと存じます。
公開セカンドオピニオンでは、これらの放射線治療の役割が少しでも期待できるお話しが出来れば幸いに存じます。

●現在
大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 生体物理工学講座 放射線腫瘍学研究室
(兼) 大阪大学医学部附属病院 放射線治療科 教授

●経歴
1991年 大阪大学医学部 卒業 大阪大学医学部附属病院
1992年 大阪府立成人病センター
1993年 関西労災病院 放射線科
1998年 大阪府立成人病センター 放射線治療科
2004年 京都府立医科大学大学院 放射線診断治療学講座 講師
2006年 藤田保健衛生大学衛生学部 診療放射線技術学科 教授
2008年 大阪大学医学部附属病院 オンコロジーセンター 特任教授
2012年 大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 医用物理工学講座 教授
2020年 現職

●資格
日本医学放射線学会 放射線科専門医(治療専門医)代議員、本がん治療認定医機構 がん治療認定医、医学物理士認定機構 医学物理士、放射線治療品質管理士、第1種放射線取扱主任者

●その他
2017~2022年 多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)」養成プラン 大阪大学拠点「ゲノム世代高度がん専門医療人の養成」事業推進責任者

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