佐野圭二先生よりご来場の皆様へのメッセージ

佐野 圭二 先生
帝京大学医学部 外科学講座 教授


 肝臓、胆道(胆嚢や胆管)、膵臓にできるがんを専門に治療しています。これらのがんは、診断しづらい、進行が早い、切除しにくい、という特徴があり、ほかのがんにくらべて最も治りにくいがんといわれています。 
 しかし、胆道や膵臓のがんにおいては患者さんの数がどんどん増加しています。われわれは、その他のがんよりも切除しにくい分、危険も伴う手術をいかに安全におこなうかを今まで最大のテーマとして取り組んできました。
 さらに切除できる患者さん、すなわち治る患者さんを増やすためにどうすればよいか、これを考えると、医療は日進月歩でありさまざまな治療法が開発されつづけていますので、われわれ外科医も手術治療だけに精通するだけでなく、その医学の進歩についていきつつ、根治治療である手術を中心にして、それぞれの患者さんにあった治療の組み合わせをお勧めできるようにしたいと思っています。手術のダメージをできるだけ少なくする腹腔鏡手術やロボット支援手術も、複数の治療を手術前後に加えて根治性を高めていくうえでさらに進めていくべき技術だと考えます。
 さらには多くの患者さんが自分に合った治療を選択できるように、治療を標準化し広める必要もあり、それを進めていくためのガイドラインをさらに充実させることも重要なテーマだと思います。ただ、そのように治療専門病院で高度な治療を受けているあいだの症状緩和治療を担う病院がみつからず困っている患者さんも多くいらっしゃいます。専門化がすすめばすすむほど患者さんの全身状態を良好に保つ主治医がみつけにくくなっているという現状がありますので、今後患者さんが困らないようなシステムも作っていく必要も感じています。
 まだまだがんを克服するまでには至っていませんが、その間も1人でも多くの患者さんに安心していただけるようアドバイスできることはさせていただきながら、皆さんからも様々なご意見をいただき、参考にさせていただきたいと思います。

●略歴
1990年 東京大学医学部卒
2004年 東京大学医学部 肝胆膵・移植外科 講師
2009年 日本赤十字社医療センター 外科部長
2010年4月~ 帝京大学医学部 外科学講座 教授

●専門
肝胆膵の悪性疾患に対する集学的治療(特に高度進行症例)

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