公開セカンドオピニオン(2022)
2022.07.31

上園保仁先生よりご来場の皆様へのメッセージ

上園 保仁 先生
東京慈恵会医科大学
疼痛制御研究講座 特任教授
国立がん研究センター東病院支持・緩和研究開発支援室
特任研究員
国立がん研究センター先端医療開発センター 支持療法プロジェクトプロジェクトリーダー


 がん患者さんは、がんになり様々な方法でがんと闘う中、自身を襲ういろいろな痛み(体の痛み、心理的痛み、社会的痛み、スピリチュアルな痛み)に直面し、がん自身のみならず、自らを取り巻く環境の中にも日々の悩みがあります。多くの痛みの中のひとつが良くなっても、それだけでは納得できる解決にはほど遠いこともあるでしょう。そのような中、患者さんを支える医療スタッフは、患者さんご自身が納得できる生き方、日々の過ごし方に、しっかりと寄り添う必要があると考えます。
 患者さんを支えるためには、多くの方法があると思います。がん治療、治療ができるための心と身体の支援、など。私はそのなかにあって、患者さんの心と身体を「漢方薬の適切な利活用」という方法で貢献できればと願っています。
 漢方薬は少なくとも2種類以上の生薬で、多いものでは18種類もの生薬でできており、それらの生薬の利点を最大限に活かせるように作られた合剤です。身体の中には漢方薬の成分が働く、いわゆる「ターゲット蛋白」が複数あります。漢方薬はこのたくさんの「ターゲット蛋白」を上手に統合し、患者さんの全体の症状を捉え、全体的に優しくはたらく薬であると言えます。
 これまで「なぜ効くのか」がわかりにくかった漢方薬が、近年の研究技術の進歩に伴って、「なぜ効くのか」が明らかになってきました。数千年前に作られ、長い歴史の中で今日まで、いわば長期間の安全性試験が行われてきた漢方薬は、脈々と続く先人の「経験知」と最先端の科学技術を用いた作用メカニズムの解明が合流し、いくつかの漢方薬は科学的根拠に基づいて西洋薬の効果を補完できるところまで来ていると感じています。
 今回の世界がん撲滅サミットでは、多くの皆様より、がん治療で起こる副作用や、がんそのものが起こすつらい症状についての疑問、悩みなどをうかがい、漢方薬の作用を通して皆さまの疑問、悩みの解決にお役に立てればと願っています。また、皆さまからの疑問を今後の漢方薬研究に生かし、さらに研究を進めて参ります。
 世界がん撲滅サミット2022 in OSAKAの会場では、どうぞよろしくお願い申し上げます。

●略歴
1985年  産業医科大学 卒業、医師免許 取得
1989年  産業医科大学大学院 修了、医学博士 取得
1991年  米国カリフォルニア工科大学生物学部門 ポストドクトラルフェロー (2.5年)
2004年  長崎大学大学院医歯薬学総合研究科内臓薬理学講座 助教授
2009年  国立がんセンター研究所がん患者病態生理研究分野 分野長
2015年  国立がん研究センター先端医療開発センター支持療法開発分野 分野長 (兼任)
2020年〜 東京慈恵会医科大学疼痛制御研究講座 特任教授(現在に至る)
2020年〜 国立研究開発法人国立がん研究センター東病院支持・緩和研究開発支援室
              特任研究員 (併任)(現在に至る)
2020年〜 国立研究開発法人国立がん研究センター先端医療開発センター支持療法プロジェクト
      プロジェクトリーダー (併任)(現在に至る)

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