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2019.11.27

がん撲滅日米共同宣言(2019)

1961年5月、J.F. ケネディ大統領が「ニューフロンティアを目指そう」とアポロ計画を提唱した結果、人類は月面に着陸することができた。そして、21 世紀の現在も米国、ロシア、中国などの大国は月や火星を目指し、日夜しのぎを削っており依然として、そのニューフロンティアは宇宙にあると言っても過言ではない。

ケネディ大統領というたった一人の人間が約60年前に行動を起こそうと呼びかけたことで宇宙はニューフロンティアに変わり、そこから人類が受けた科学的技術的恩恵は計り知れないものがある。

しかし、もう一つのニューフロンティアが間違いなく地球上に存在していることを我々人類は忘れてはいないだろうか。それこそが、『がん撲滅』という前人未到の大地である。

人類とがんの死闘は約4000年前から続いているが、悲しいかな人類はがんを撲滅するどころか、圧倒されつつある状況である。

たとえば、日本では2人に1人が罹患し、がん患者のうち3人に1人が死亡している。一方、アメリカでも2019年では176万2,450人が、がんに罹患し、死亡者は60万6,880人と予測されている。近年になって日米両国国民に、がんの予防と治療に対する考え方が浸透してきたとはいえ、がんは依然として人類にとって深刻な問題であることに変わりはない。

見回せば各国では気鋭の研究者が次々と先端医療を生み出している。しかし、その一方で子どもたちや前途ある若者、子育てに励む主婦や一家の大黒柱が次々とがんによって打ちのめされ、天に召されているのである。

果たして、我々人類は、このままがんに打ちのめされ続けたままで良いのだろうか。そのツケは必ず次世代の子どもたちに回ってくるというのに、である。

振り返ってみよう。我々の先人は古にペストや天然痘、結核など不治の病を克服し、あるいは撲滅してきたではないか。不可能と思えることは、やがて困難に変わる時が来る。そして困難がやがて可能へと姿を変えてきたことは、これまで先人が証明してきたことである。

であるならば、今こそ先人に学ぼうではないか。現在、不可能と思われている『がん撲滅』というもう一つの地上のニューフロンティアを目指そう。

「世界は1人のために、1人は世界のために」

これが人類共存の精神である以上、小児がんやすい臓がんをはじめとするあらゆるがんに苦しむ人々や次世代の人類を救うため、我々もチャレンジを今から開始しよう。

幸い日本では2013年9月、一人の作家によって「今こそオールジャパンでがんを撲滅しよう!」とがん撲滅サミットが提唱され、2015年6月9日、皇室、政府、財界、医療者、市民など心ある人々が集い、そして立ち上がり、そのアクションは本年で5回目を迎えることとなった。

一方、アメリカでも「難病やがん克服のために再生医療を活用しよう」と公益資本主義を目指す一人の実業家が呼びかけたことによって、同様に政府、国連、財界、医療者、市民ら勇気ある人々が集い、声を上げ始めている。

この気運を更に高めていこう。約4000年というはるか太古より続いてきた人類とがんとの闘いに、今こそ終止符を打とう。

そのために我々は、まず日本から始まったがん撲滅への挑戦をアメリカの勇気ある人々と連携して、世界に医療のパラダイムシフトを起こそうではないか。

かつてアポロ計画を主導し、深遠なる宇宙を目指し、見事にこれを成し遂げたアメリカの偉大なる友人たちと共に、今度は人類の前に立ちはだかる、がんという巨大な壁に戦いを挑もうではないか。

古代に少年ダビデが、ゴリアトという巨人を倒すためにたった一人で立ち上がったように、今こそ日米の勇気ある友人よ、恐れることなく巨大な敵に立ち向かおう。

我々はケネディ大統領のような偉大なリーダーにはなれないかもしれない。だが、それでも臆することはない。なぜなら我々は名声よりもチャレンジする勇気を失うことの方を恐れるからだ。

今、我々はがん撲滅への挑戦を開始するため次のアクションを起こしたい。

① 今年、東京で開催される第5 回目の大会を迎えるがん撲滅サミットは総理官邸、厚労省などの政府や日本経済団体連合会などの経済界、国立医療機関、大学病院などの医療者と共にがん撲滅に向けたアクションを重ねており、現在はがんを撲滅するため『先端高度がん医療センター』の構築やがん予防薬剤の開発を含めた新規治療の開発や実用化を政府に提言するなど、具体的な提言活動を行っている。

今後はオールジャパンで更なるがんの撲滅に向けてアクションを続けていく。

② アメリカでも上記のアクションを起こすため、政府をはじめNIH、NCI などの政府系医療機関及び米国がん学会や米国腫瘍学会のような学会や医療機関、患者、家族などの市民に対してオールアメリカでがん撲滅に向けて立ち上がり、日本と共にアクションを起こしていただくことを期待したい。

③ 日米双方の政府と共に、学会、研究機関、医療機関などと共に民間主導によってがんの撲滅に向けた情報交換、及び共同研究ネットワークの構築。

体と経済に負担の少ない早期診断技術やプレシジョン医療、ゲノム医療のさらなる推進を働きかけていこう。

④ 患者の権利の確立に向けて日米で戦略的アクションを起こそう。

⑤ がん予防のためのワクチンや薬剤の開発と実用化など、がん医療のトレンドを改革するために緊密に連携しながら前進しよう。

⑥ 将来的に人類の叡智を結集するために医療版ダボス会議の開催を目指そう。

こうした具体的目標を一つ一つ実現するためにも今、行動を開始しよう。2025年までに持ち運びのできる副作用のない服用型の安価ながん予防薬を世界で開発しよう。そして2030年をがん撲滅のゴールにしようではないか。そのために日米両国をはじめとする我々有志は、AIと共に手を携え、がん撲滅に向けた世界的なネットワークの確立に向けて、記念すべき第一歩を、ここ東京とサンフランシスコの地から互いに踏み出すものとする。

『攻めなければ負けしかない中、がん撲滅を目指すぐらいの意気込みは必須と感じます』

これは日本で開催された第1回がん撲滅サミットにおける高円宮妃殿下のお言葉である。我々は、このお言葉を胸に刻みつつ未来に向かって力強く前進していくことをここに誓う。

2019年11月17日

アライアンス・フォーラム財団 代表理事 原  丈人

シカゴ大学 教授 マークJ.ラテイン

第5回がん撲滅サミット 代表顧問・提唱者 中見 利男

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