中山貴寛先生よりご来場の皆様へのメッセージ

中山 貴寛 先生
大阪国際がんセンター
乳腺・内分泌外科
主任部長

 国立がん研究センターがん情報サービスの最新のがん統計によると、9人に1人が生涯乳がんに罹ると報告されています。日本の女性の罹るがんの中で第1位であり、ますます欧米の乳がん罹患率との差が縮まってきています。
 しかし、先日発表された乳がんの10年生存率はI期:99.1%、II期:90.4%と非常に良い成績でした。つまり、乳がんは罹患率の高い病気ですが、早期(I期、II期)に発見すれば高い確率で治癒を目指すことのできる病気であることがわかります。
 乳癌は大きく分けて4つのタイプに分類され、それぞれのタイプに適した治療法(ホルモン療法、化学療法、抗HER2療法など)がガイドラインで推奨されています。さらに、乳がんの再発リスクを考慮して治療の強さ、つまり、抗がん剤治療を行うか否かを決定します。
 一般的に手術可能な患者さんのうち、半数を超える患者さんが手術前後に抗がん剤治療が必要と判断されます。ご存知の通り、抗がん剤治療には脱毛や吐き気、骨髄機能の低下に伴う発熱、口内炎など様々な副作用を伴います。しかし、薬剤や医療機器の開発により、多くの副作用が適切にコントロールされるようになってきました。
 皆さんが心配される吐き気はかなりの割合で制御できるようになりましたし、骨髄機能を維持する薬剤も開発されたため安全性も格段に上昇しました。最近では、脱毛予防の医療機器も開発され、ある一定の条件を満たす患者さんでは、その機器を用いることにより、脱毛を抑制もしくは、たとえ脱毛が起こっても短期間で回復するようになってきました。
 手術療法においても、様々な選択肢が提示できます。早期に発見することによって、乳房の整容性をできるだけ保ちながら、乳房を温存することも可能になりました。また、切除範囲が大きく整容性が損なわれる場合には、乳房再建という選択肢も提示できます。
 ここまでに述べてきたように、乳がんは早期発見と適切な治療によって治癒が可能な病気です。そして、様々な薬剤や医療機器の開発によって、治療による肉体的および精神的な負担もかなり軽減できるようになってきました。
 乳がんに対する漠然とした不安によって受診をためらう必要はありません。私たちにその不安をぶつけていただければ、皆さんを最善の治療に導くことができると思います。
『世界がん撲滅サミット2022 in OSAKA』の公開セカンドオピニオンが、乳がんを正しく理解し、最善の治療を受けていただくためのきっかけとなれば幸いです。

●略歴
1990年に奈良県立医科大学を卒業後、大阪大学医学部第二外科(現消化器外科)に入局。一般外科研修の後、1994年から大阪大学大学院において、また1998年から2年間、米国John Wayne Cancer Instituteにて癌の発生・進展に関する研究に従事。
2005年には米国 MD Anderson Cancer Centerに留学し、乳癌のチーム医療を学ぶ。
2008年4月から2012年3月まで大阪大学大学院医学系研究科 乳腺内分泌外科に勤務。
2012年4月より大阪府立成人病センター(現病院名:大阪国際がんセンター)乳腺・内分泌外科 副部長、2016年同施設 主任部長に就任。
2020 年4 月より乳腺センターを新設し、乳腺センター長として乳癌診療におけるチーム医療の推進、新しい薬剤や治療法の開発を目的とした治験や臨床試験の実施、さらに乳癌治療の個別化にむけた基礎研究など、多岐にわたる活動を行っている。

●出演番組
読売テレビ おはよう!ドクター、情報ライブ ミヤネ屋、かんさい情報ネットten.、朝生ワイド す・またん!、news every.などに出演

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