大会長ご挨拶(2020)

『日米がん撲滅サミット2020』大会長 原 丈人
内閣府参与
アライアンス・フォーラム財団 代表理事

『日米がん撲滅サミット2020』大会長として、一言ご挨拶申し上げます。

おかげ様で新型コロナウイルス禍の中で本年も本大会を開催することができました。
政府、経済界、医療界、そして各界の皆様、ご協賛いただいた皆様、関係者、患者の皆様に心より御礼申し上げます。

今年は米国よりマーク・J・ラテイン教授、ローラ・エッサーマン教授という世界のリーダーにもリモート参加をいただき、太平洋をはさんだ日米両国ががん撲滅に向けて連携することになった歴史的かつ画期的な大会となります。

振り返れば2013年、私は「天寿を全うする直前まで健康でいることを実現できる世界最初の国に日本がなる」というビジョンを掲げました。さらには、2050年までには人類を苦しめている6,500種類の難病も日本でなら治療の可能性があるという世界的な評価をつくりたいと考えています。

これを実現するためには三つの要素が必要になります。「技術イノベーション」「制度イノベーション」そして「エコシステム」です。

技術イノベーションは、文字通り不慮の事故による障害や、がん、心疾患、感染症、難病などで健康な生活を奪われても治療し、再び健康な生活を取り戻せるための医学分野の科学技術開発のことです。

制度イノベーションは、技術イノベーション以上に大切ともいえます。
技術イノベーションの結果、健康を回復できる治療法が完成したとしても、これを速やかに必要とする人々が使えるような制度設計を行うことを制度イノベーションと言います。
現在は、世界の多くの国々が米国食品医薬局(FDA)の定める新薬許認可制度に倣っています。この制度で認可をとるには10年以上の年月がかかるので、数年の余命告知を受けた患者は薬を手にする前に最期を迎えてしまいます。

患者の立場に立ってみれば有効性が確立できていなくても、可能性さえ予測できる場合には、安全性確認ができた段階で新薬を手にしたいはずです。このような制度改革のためのイノベーションが必要になってきます。

三つ目のエコシステムとは、技術イノベーションと制度イノベーションに関連を持たせ、
お互いに前向きの影響を与えながら前進させていくための仕組みのことを指します。

技術イノベーションと制度イノベーションがばらばらに動いていてもなかなか機能しない。そこでビジョンを実現するため、エコシステムとして「天寿を全うする直前まですべての人々が健康で暮らせる社会の構築」を目指して、2012年にワールド・アライアンス・フォーラム サンフランシスコ会議を発足させました。

さらに私は昨年開催したワールド・アライアンス・フォーラム サンフランシスコ会議で、がん撲滅にも取り組む決意を日本の中見利男氏にもお伝えしたところ、日米でがん撲滅をやりましょうというご提案をいただきました。そこから我々はがん撲滅に向けて本格的スタートを切らせていただいたのです。

今、日本に必要なことはがん医療界に革新的な技術を導入し、その力によってがんを撲滅するという力強いエネルギーです。海外で標準治療になるのを待ってから我が国が追随するというのでは壁は突破できません。自らが先頭に立って壁を突破しようと工夫しなければなりません。

主だったがんの撲滅を2030年までに実現し、世界で最初の「がん撲滅国家」となることを目指そうではありませんか。私はがん撲滅と並行して心臓病、脳、肝臓、肺などの病気治療技術や環境の向上、車椅子や失明からの解放など「大病をしても回復し寿命を全うする直前まですべての国民が健康に暮らせる世界最初の国をつくる」ことに向けて、これからも尽力していきたいと思います。

同時に心身の健康とともに経済面においても余裕を持てる社会の構築が必要です。数多くの国民がコロナ厄災のために職を失い、住む場所までも失っている現状に対応すべく政府は支援金や補助金制度を拡充し、強制的な指示を国民にすることがない中で、海外諸国と比べてもそれなりの効果を上げていますが、世界的な金融緩和措置の恩恵は解雇された中間層、非正規雇用者や底辺にある人々には届かず、株式市場にお金が流れ高速取引を行うファンドやアクティビストたちだけが潤う構造は日本でも同じです。これはあまりにも理不尽です。このような状態を正そうとする動きを政府内で起こす必要があるのです。

そこで、日本政府にあらたに危機管理会社法制会議を法務大臣のもとで設置されましたので、この重要問題の解決に向けて全力で取り組みます。財務省法人統計によりますと我が国には約280万社の会社がありますが、現行の会社法では長年にわたって社員の努力の結晶として積み立てられた貯金のような留保金を、村上ファンドのようなにわか株主の「今だけ自分だけの金だけの」要求に対してなすがまま特別配当などの形で株主に還元できるようになっています。将来の日本が感染症危機、地震津波などの自然災害危機で会社が長期にわたって売り上げを維持することが出来ないような状態が訪れることは充分に予想できます。このような危機の時に、過去に積み立てた利益を株主還元に使うのではなく、社員とその家族を守るために使えるような会社法体系に変えていくことは政府の国民に対する責務であると考えます。会社法の所管は法務省です。経済危機から国民生活を守るための会社法の見直しを行うことを内閣府参与の立場で4月頃から提案しようやく9月に発足に至ったのが法務省危機管理会社法制会議なのです。

再びがん撲滅の話題に帰りますが、日本のみならず世界の力を合わせて新しい力を生み出しましょう。免疫療法、ウイルス療法、より安全で効果的な放射線療法など次々と新しい技術を取り入れて技術イノベーションを我が国がリードしていきましょう。そのためには、断固として制度イノベーションを押し進め、どんな圧力も抵抗勢力も恐れない。それこそが中見利男氏が提唱する医療民主主義の確立です。でなければ世界をリードできるようながん撲滅を実現できる国にはなれません。真のイノベーションを起こすことができません。

そこで今大会のテーマは『不可能を可能に変えろ!今、日米両国で始まるがん撲滅への挑戦!』と致しました。
がん患者がそこにいる以上、我々は現状に満足して立ち止まることは許されません。「がん撲滅」という人類のニューフロンティアに対し、不可能を可能に変えるため共に前進しようではありませんか!

もう、がん撲滅は日本人だけの戦いではありません。人類全体の戦いにしなければなりません。本日、私共はそれを実感していただける大会にして参ります。

来年は、がん撲滅サミットを大阪の地で行うことを決定いたしました。「いのち輝く未来社会に向けて」という理念を掲げる2025年の関西万博の会場となる大阪で12月5日に開催いたします。ご期待ください。

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